世界に響け OTAIKO         (平成8年2月に福井新聞にて特集されたものです。)


 福井新聞    平成8年2月24日    「明神」誕生  町民自ら「打ちたい」

 織田町の創作和太鼓グルーブ、OTAIKO座「明神」が3月1日からオーストラリア・アデレ一ド市で開催される第19回アデレード国際芸術祭に招侍され出演する。  同芸術祭は南半球最大規模のフェスティバルで和太鼓では日本から初参加。オ一プニングコンサートから滞在期間中の5日までに9ステージが予定され、大きな期待が寄せられている。
 そこで、OTAIKO座「明神」の歩みとブロフィルを紹介する。

 織田町は昔から全集落に「だいず太鼓」が伝えられ、剱神社には毎年「明神ばやし」が奉納されるなど太鼓がとても盛んな町。特に子供の「明神ばやし」は県無形民俗文化財に指定されている。また、織田まつり(10月9,10日)には町内8支部からだいず太鼓の山車が繰り出し、勇壮に打ち鳴らし、巡行するのが名物になっている。
 そこで、ふるさと創生一億円の一部を使って、平成元年、太鼓の町のシンボルとして、当時、西日本一の大太鼓明神を制作。アフリカのカメルーンでとれたブビンガという巨木をくり抜いて造ったもので、牛皮の直径が五尺(一・五b)胴幅二b、長さ二bで重さが800キロ、台が200キロというスケール。

 当初は飾りものだったが町民から「大太鼓といえども楽器。ぜひ、たたいてみよう、その音を聴いてみよう」との声が上がり、その年十月の織田まつりで、プロの太鼓奏者で「天邪鬼」主宰、渡辺洋一氏とアルトサクソホンの坂田明氏、パーカッション仙波清彦氏を招いてたたき初めが行われた。
 力いっぱいたたくと、重低音の音圧で皮膚がビリビリ、窓ガラスがガタガタ、その音は4、5キロ西方にまで伝わるという威力がある大太鼓だ。

 この大太鼓「明神」で町おこしをと、翌年の平成二年夏、OTAIKO響'90初めて企画された。渡辺氏と武生のはぐるま太鼓などが出演し、8,000人の観衆が集まり大成功。今度は「大太鼓をプロに演奏してもらうのではなく、町民自らたたきたい」との声が上がり、その夏、町では太鼓集回の育成に着手した。各区長に村一番の若手の太鼓打ちを集めるように呼ぴ掛け、青年20人が参加。おなじみの渡辺氏に月一回の太鼓指導を依頼して猛練習。仕事で疲れているうえに練習のあまりの激しさにメンバ−の半数が脱落。しかも、あまりの音量に町民から苦情も続出。練習会場を萩野小体育館や除雪機材倉庫など転々とし、苦労続きだつた。
 しかし、10人のメンバ−が一年間頑張り抜き、平成3年8月、OTAIKO響'91で渡辺氏作曲の大太鼓組曲「夢・開眼」でデビユーした。人口5,400人の山あいの町に三倍の16,000人の観客が集まり、OTAIKO座「明神」の華々しい門出となった。


 福井新聞   平成8年2月27日    アデレード(豪州)へ  実力証明  幸運つかむ

 OTAIKO座「明神」は毎年夏、織田町で開催される和太鼓フェスティバル「OTAIKO響」をメーンステージに同町の”文化大使”として県内外の各種イベント(年間20ステージほど)に出演し、織田町をアピールしている。
 グループを結成して4年目の平成5年、第8回国民文化祭いわて93・全日本太鼓まつり創作太鼓コンクール部門団体の部で全国応募53団体のうち本選戦出場8団体の中に入り、岩手県知事賞を受賞した。アマチュアでは全国トップレベルの実力が証明された。
 平成6年8月に太鼓の町にふさわしくオタイコ・ヒルズが完成。野外ステージをはじめ立派な太鼓練習場も二部屋設けられ、太鼓文化振興の拠点が確保、練習会場に恵まれるようになった。

 同年7月から9月にかけでJT(日本たぱこ)セブンスターの全国放映コマーシャルに「明神」の上坂優代表らが出演。三重まつり博の「福井県の日」やサンドーム福井のリフトアップ完了式典、全国ふるさとフヱアのふるさとステージやNHK、民放のチレビに出演するなど演奏活勤に拍車がかかった
 一方、織田町は国際交流事業として平成五年から毎年、春休みを利用して織田中学生を十二、三人ずつ南オ一ストラリア州都のアデレード市へ派遣し、ホ一ムスティを続けている。武田直登町長も初回には州都知事を表敬訪問、翌年には町視察団も訪問している。

 国際交流員として、アデレード市出身のキャロル・ジャニー二さんが同町に着任するなどアデレード市との友好関係が深まっている。
 こうした中で織田中学生のホームスティを受け入れているPBES教育機関の社長、アイリーン・ケービックさん(フリンダース大学学長夫人)が来町。その時、「明神」の演奏を聴いて感動し、早速、アデレードフェスティバルのアーティスティク・ディレクターのバリー・コスキーさんに紹介した。
 昨年6月、パリー・コスキーさんとゼネラルマネージヤーのイアン・スコービィさんが来町。オタイコヒルズで審査会が開かれ、メンバー15人が18番の「夢開眼」と「アフリカンビート囃」のオリジナル2曲を演奏。明神太鼓がその威力を発揮し、気迫のこもった演奏にコスキーさんは「素晴らしい、ぜひアデレ一ドへ来てください」と招待が決まった。
 アデレードフエステイバルは1960年に創設。2年に1回のビエンナ一レ方式で開催され、今年で19回目を迎えるが、日本の創作和太鼓が招待されるのは初めて。OTAIKO座「明神」はその実力もさることながらさまざまな幸違も重なり、世界六大芸術祭のひとつに数えられるアデレードのビッグステージに立つことになった。


 福井新聞  平成8年2月28日  高鳴る鼓動  最高舞台目指し一丸

 ○TAIK○座「明神」は団員が23人。このうち16人がアデレード国際芸術祭に参加する。
 大半が結成以来のメンバーでステージ経験も豊富。初日のオーブニングコンサートでは最後に出演。ダイナミックな”太鼓オ一ケストラ”のアンサンプルを披露する。滞在期問は五日間と短いが、マンボの王様、チト・ピエンテとのセッションと一時間半のフルパフォーマンスが組まれており、計9ステージに出演。
 5尺(1.5b)の大太鼓「明神」と大うちわ太鼓二台、尺八寸(54センチ)の長胴、同桶胴太鼓各4台、四連うちわ太鼓2台、締め太鼓六台、ちやんちきとキャノン、シンセサイザーを使用。ピッグバンドなみの編成で臨む。
 デビュー作の18番、大太鼓組曲「夢聞眼」(14分)とサンバ風の「アフリカンビート囃」(12分)林英哲氏作曲の男の太鼓「セプンスター」(9分)日本調の「さくら」、観客と「ワッショイ」の掛け合いで演奏するノリのある「楽鼓」など七曲を披露。
 なにしろ初参加の和太鼓。「バイタルでスピリツチヤル」と向こうのブログラムには演奏写真入りで紹介されているが、外国人にどのように受け止められるか、大きな関心が寄せられている。
 代表は上坂優さん(36)で小学三年の時、福井国体開会式で「明神ばやし」の太鼓を打って以来、太鼓歴27年のベテラン。一座を明るくまとめてリーダ一シップを発揮してきた。「メンバーは中学生から四十代までバラエティ−に富んでいますが、チームワーグはだれにも負けない。世界中の人に”熱ぎ太鼓〃”鼓動を伝えたい」ときっぱり。
 「最年長」が冨田一茂さん(43)=北、地方公務員=で同町企画振興課長を務めている。「明神」が発足して間もなくメンパーが一人足りなくなり、ピンチヒッターで参加したのがきっかけ。冨田さんは長女の育美さん(14)=織田中二年=も参加しており、親子で出演する。次いで佐々木隆興さん(41)=辻、文房具店経営=太鼓歴は十数年。「太鼓には血が騒ぎます。体力と集中力が続く限り頑張り力いっぱい演奏したい」とにっこり。主力は30代で六人。山口和弘さん(34)=市場、理容師=は「相生」という新曲で石田公代さん(19)=太王丸、仁愛短大二年=とペアで演奏。アデレードでは「明神の迫力と華やかさをアビールしたい」と張り切っている。

 また、左近浩幸さん(34)=平等、会社員=、山下和宏さん(34)=市場、教員=、相馬浩基さん(33)=中、建築設計士=、林雅彦さん(31)=上山中、リボン製造業=、佐々木勝也さん(31)=笈松、木材業=が出演。「お客さんと一体になれる演奏を」と林さん。「不安はありますが、気のぶつかり合いで盛り上げたい」と相馬さん。
 二十代のメンバーは林大敬さん(26)=馬場、デザイナー=と水嶋充さん(22)=中、造園業=、水田八重子さん(27)=馬場、会社員=の三人。水嶋さんは「海外公演が夢でした。これまでの最高のステージを目指したい」と大張り切り。十代は石田さんと冨田さんのほか、河原由美子さん(19)=辻、金沢大一年=と臼屋智子さん(14)=大王丸、織田中二年=が参加。一座に同行する織田町国際交流員、キャロル・ジャニー二さん(26)は「アデレードは私のふるさと。大変、うれしく誇りに思っています。エキサイティングな素晴らしい潰奏を見せてくれるでしよう」と話している。


 朝日新聞  平成8年2月27日  越前の響き 豪州で 猛練習、あす出発 一行17人、ア市の女性も

 丹生郡織田町の創作太鼓集団「O・TA・I・KO(おたいこ)座『明神』」が3月1日から17日まで、オーストラリアのアデレード市で開かれる伝統の「アデレードフェスティバル」に招待され、17人が創作太鼓の演秦を披露する。同国での和太鼓演秦は初めてとされ、勇壮な「越前の響き」をとどろかせる。
 繊田町は、国際交流事業として1993年から同市を選んで織田中学生の海外派遣ホームステイを行ってきた。この派遺事業め手引きをしたのが国際教育センター福井事務所長の大谷君枝さんで、町のオタィコ・ヒルズが出来上がった94年8月、大谷さんが明神の演秦を見て感激し、アデレード市に紹介したのが発端になったという。
 アデレード市は、南オーストラリア州の州都で人口百万人の大都市。フェスティバルは2年に1回開かれる有名なイベントで、今年は米国、ロシアなど世界の22カ国から71団体が参加する予定という。
 明神の一行17人のうち女性は6人。同町の国際交流員でアデレード市出身のキヤロル・ジヤニー二さん(二六)もメンバーの一人だ。また、織田中二年の冨田育美さん(14)は、町企画振典課長冨田一茂さん(43)の長女で父子での参加となる。同中二年、臼屋智子さん(14)も加わっている。チーフは、木工会社員の上坂優さん(35)。ほかのメンバーは公務員、建築設計士、学生など多彩な顔触れだ。演葵は1日から5日まで連日あり、「サクラ」「七ツ星」など7曲を用意。うち4曲は渡豪州のために準備した新曲。92年のデビユー曲とした「夢開眼」も演秦する。
 一番長いステージは最終日となる5日の90分。「この日は全部の曲を演奏することになりますが、精いっぱい打ってきます」と冨田課長。28日に織田町を出発の予定で、オタイコ・ヒルズの太鼓練習館では夜2時間、事前の猛練習を重ねている。太鼓は一足早く現地に送られている。




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